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トランプ大統領誕生期待と暗号資産市場の現実:なぜ価格は伸び悩むのか?貿易関税・戦争リスクと今後の展望

2024年1月30日

SBI VCトレード

トランプ政権下の暗号資産シナリオ:期待の先行織り込みと新たなリスク要因

2024年の米国大統領選挙戦が進むにつれ、ドナルド・トランプ前大統領の再選が現実味を帯びる中で、暗号資産市場では「トランプ大統領=暗号資産市場の追い風」という期待感が醸成されました。実際に、トランプ氏の暗号資産に好意的な発言や、同氏に関連するミームコインが急騰する場面も見られ、市場は大きな期待を寄せました。しかし、選挙が終わり、市場の期待とは裏腹に、ビットコインをはじめとする主要な暗号資産の価格は、力強い上昇トレンドを形成するに至っていません。一部では、むしろ上値の重い展開が続いています。

なぜ、あれほど喧伝された「トランプ相場」は実現していないのでしょうか。本稿では、この期待と現実のギャップが生まれた背景を多角的に分析します。マクロ経済の動向、期待の先行織り込み、そしてトランプ政権がもたらすであろう貿易関税や地政学リスクといった、より複雑な要因を解き明かし、暗号資産市場が本格的な上昇軌道に乗るために必要な条件と、その時期について詳述します

なぜ「トランプ大統領=暗号資産に追い風」と期待されたのか?

まず、市場がなぜトランプ氏の再選にこれほどまでの期待を寄せたのか、その背景を整理する必要があります。主に以下の三つの要因が挙げられます。

発言とスタンスの劇的な転換

トランプ氏の暗号資産に対するスタンスは、一貫していたわけではありません。大統領在任中、彼はツイッター(現X)でビットコインを「空気から生まれたもの」「好きではない」と述べ、リブラ(後のDiem)計画を批判するなど、明確に否定的な見解を示していました。

しかし、2024年の大統領選挙キャンペーンが本格化すると、その姿勢は180度転換します。

  • NFTの発売と活用: 自身をモチーフにしたNFT(非代替性トークン)を発売し、大きな成功を収めました。これは、彼が暗号資産技術の商業的な可能性を認識したことを示す最初の兆候でした。
  • 選挙資金での暗号資産受付: 選挙キャンペーンにおいて、ビットコインやイーサリアムなど主要な暗号資産での献金受け入れを表明しました。これは、暗号資産保有者を明確な支持層として取り込む戦略的な動きと見なされました。
  • バイデン政権の規制強化への批判: 現職のバイデン政権、特にゲーリー・ゲンスラー委員長が率いるSEC(証券取引委員会)の執行強化路線を「暗号資産への戦争」と批判。「米国で暗号資産の未来を築く」「イノベーションを米国に留める」といった、業界に寄り添う発言を繰り返しました。
  • マイナー(採掘業者)への支持: ビットコインマイナーと会合を持ち、彼らの活動がエネルギー網の安定化に貢献するなどと持ち上げ、米国でのマイニング事業を支援する姿勢を明確にしました。

この劇的な変化は、暗号資産を支持する有権者層、特に若者やリバタリアン層へのアピールという政治的計算があったことは明らかです。しかし、理由はどうあれ、次期大統領候補が明確に業界の擁護者として振る舞ったことは、市場に大きな期待感を抱かせるのに十分でした。

規制緩和への強い期待

トランプ氏の親密な発言以上に市場が期待したのは、具体的な「規制緩和」です。バイデン政権下、特にSECのゲンスラー委員長は、「執行による規制」と呼ばれるアプローチを取り、多くの暗号資産プロジェクトや取引所を「未登録証券」であるとして提訴しました。これにより、何が合法で何が違法かの境界線が曖昧なまま、業界は常に訴訟リスクに晒され、イノベーションや事業開発が萎縮していると批判されてきました。

トランプ氏は、この状況を打破してくれる救世主として期待されたのです。特に、ゲンスラー委員長の解任を示唆する発言は、市場関係者から喝采を浴びました。後任には、より市場寄りで、イノベーションを阻害しない人物が任命されるとの期待が広がりました。明確なルール作り(例えば、議会で審議が続くステーブルコイン法案の成立促進など)が進むことで、機関投資家が安心して市場に参入できる環境が整うとの観測が、価格上昇期待の根幹を成していました。

期待感の市場への直接的な反映

これらの期待は、単なる希望的観測にとどまらず、実際の市場価格にも反映されました。トランプ氏の支持率が上昇したり、彼が暗号資産に関するポジティブな発言をしたりするたびに、市場は敏感に反応しました。特に、「MAGA (Make America Great Again)」といったトランプ氏のスローガンを冠したミームコインは、投機的な資金を集めて数十倍、数百倍という驚異的な高騰を見せました。これは、市場がいかに「トランプ・ナラティブ(物語)」に熱狂していたかを示す象徴的な出来事でした。


期待に反して価格が伸び悩む複合的要因

熱狂的な期待とは裏腹に、なぜ市場は停滞しているのでしょうか。その理由は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。

最大の逆風:マクロ経済環境の悪化

最も大きな理由は、暗号資産市場という個別の要因を吹き飛ばすほどの強力な逆風、すなわちマクロ経済環境の悪化です。

  • 高金利の長期化: 2022年以降、世界的なインフレを抑制するために、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は急激な利上げを実施しました。金利が上昇すると、銀行預金や国債といった安全な資産の魅力が高まる一方、ビットコインのような価格変動の激しいリスク資産からは資金が流出する傾向があります。当初、2024年には利下げへの転換(金融緩和)が期待されていましたが、インフレが想定よりも根強く、FRBは利下げに極めて慎重な姿勢を崩していません。高金利が長期化するとの見方が市場の重しとなり続けています。
  • 根強いインフレ懸念: トランプ政権が誕生した場合、後述する大規模な減税や保護主義的な関税政策が、再びインフレを刺激するのではないかという懸念が燻っています。インフレが再燃すれば、FRBは利下げどころか、再度利上げに踏み切る可能性すらゼロではありません。この不確実性が、投資家をリスク回避的にさせています。
  • 世界的な景気後退リスク: 高金利とインフレは、企業収益や個人消費を圧迫し、世界経済を景気後退(リセッション)に陥らせるリスクを高めます。景気が悪化すれば、投資家の財布の紐は固くなり、暗号資産のような投機的な市場に流れ込む資金は必然的に減少します。

つまり、たとえトランプ大統領が暗号資産に優しくても、市場全体に資金が供給されない「金融引き締め」の環境下では、本格的な上昇トレンドは起こりにくいのです。

「噂で買って事実で売る」の典型パターン

相場の格言に「噂で買って事実で売る(Buy the rumor, sell the news)」というものがあります。今回のケースは、この典型例である可能性が高いと考えられます。

トランプ氏が当選するかもしれないという「噂」や、彼が暗号資産に好意的であるという「期待」は、2024年を通じて徐々に、そして継続的に市場価格に織り込まれてきました。多くの投資家が、その期待を先取りして既にポジションを保有していたのです。そして、いざ当選という「事実」が確定したとき、新たなポジティブサプライズがなければ、材料出尽くしと見なされ、利益を確定するための売りが優勢になります。市場が次の具体的な政策(例えば、SEC委員長の更迭や具体的な法案の進展)を待つ「様子見」ムードに入った結果、価格が伸び悩んでいると解釈できます。

規制の不確実性は依然として残る

トランプ氏が大統領になったからといって、米国の規制環境が即座に変わるわけではありません。

  • 人事と方針転換には時間がかかる: SECやCFTC(商品先物取引委員会)といった規制当局のトップ人事は、議会の承認が必要であり、数ヶ月単位の時間がかかります。また、新任者が就任したとしても、組織の方針を転換し、新たな規則を策定・施行するには、さらに長いプロセスを要します。
  • 議会との連携が不可欠: ステーブルコイン法案のような包括的な法整備には、大統領の意向だけでなく、上下両院の協力が不可欠です。議会が「ねじれ」状態にある場合、法案審議が停滞する可能性も十分に考えられます。
  • トランプ氏自身の気まぐれ: 過去の言動からも明らかなように、トランプ氏のスタンスは変わりやすいというリスクも内包しています。市場にとって都合の悪い方向に、再び舵を切る可能性もゼロとは言い切れません。

これらの「不確実性」が残存している限り、特に年金基金や政府系ファンドといった超巨大な機関投資家が、本格的に資金を投じることには慎重にならざるを得ません。

暗号資産市場の内部要因

マクロ経済や政治的要因だけでなく、暗号資産市場そのものが抱える内部的な要因も価格の重しとなっています。

  • ビットコインETFへの資金流入ペースの鈍化: 2024年初頭に承認された現物ビットコインETFは、市場に新たな資金を呼び込む起爆剤となりましたが、その流入ペースは一時期に比べて鈍化しています。
  • 半減期後のマイナーの売り圧力: 2024年4月にあったビットコインの半減期は、長期的には供給減を通じて価格を押し上げる要因ですが、短期的には採掘報酬が半減したマイナーが、運営コストを賄うために保有するビットコインを売却する圧力(売り圧)となります。


貿易関税と戦争がもたらす新たなリスク

トランプ政権が誕生した場合、その政策の柱となるのが「保護主義的な貿易政策」と「アメリカ・ファーストの外交政策」です。これらは、暗号資産市場にとって、単純な追い風とは言えない複雑な影響を及ぼす可能性があります。

「トランプ関税」が世界経済と市場に与える影響

トランプ氏は選挙中、中国からの輸入品全般に60%以上、その他の国々からの輸入品にも一律10%の追加関税を課すことを公約として掲げました。これが実行されれば、世界経済に激震が走ることは避けられません。

  • インフレ圧力の再燃: 関税は、輸入製品の価格を直接的に押し上げます。これにより、米国国内の物価が上昇し、FRBが苦労して抑え込んできたインフレが再燃するリスクが非常に高まります。前述の通り、インフレは金融引き締めを正当化し、暗号資産市場には明確な逆風となります。
  • 世界的なサプライチェーンの混乱と景気後退: 各国が報復関税を発動すれば、世界的な「貿易戦争」に発展します。サプライチェーンは寸断され、企業の生産コストは上昇、世界全体の貿易量が縮小し、世界経済が深刻な景気後退に陥る可能性があります。これもまた、リスク資産市場全般にとって強いマイナス要因です。

貿易戦争下における暗号資産の二面性

このような世界的な経済不安の中で、暗号資産、特にビットコインはどのように評価されるのでしょうか。これには二つの側面があります。

  • ネガティブな側面(リスク資産としての売り): 貿易戦争による景気後退懸念が強まれば、投資家はリスクの高い資産から資金を引き揚げ、現金や米国債といった安全資産に退避させます。この「リスクオフ」の局面では、暗号資産は株式などと同様に売られる可能性が高くなります。過去の米中貿易摩擦の際も、ビットコインは必ずしも安全資産として機能せず、市場全体のセンチメント悪化に連れて下落する場面が多く見られました。
  • ポジティブな側面(「デジタルゴールド」としての買い): 一方で、貿易戦争が激化し、基軸通貨である米ドルへの信認が揺らいだり、特定の国で自国通貨の暴落や厳しい資本規制が敷かれたりするような極端な状況では、ビットコインが国境を越えて価値を保存・移転できる「デジタルゴールド」あるいは「政治的中立資産」として見直され、資金の逃避先として買われる可能性も秘めています。

しかし、現状では前者の「リスク資産」としての側面が強く意識される可能性が高いと考えられます。

戦争など地政学リスクの深刻化

ウクライナ情勢や中東情勢など、世界各地で地政学リスクは依然として高いままです。トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策が、同盟関係の軽視や国際的な紛争への関与縮小につながれば、世界の不安定化がさらに進むとの懸念もあります。

地政学リスクの高まりもまた、暗号資産に二面的な影響を与えます。紛争当事国やその周辺国では、法定通貨システムへの不信から、個人の資産保全や国外への資金逃避のために暗号資産の需要が高まることがあります(ウクライナでは実際にこの動きが見られました)。しかし、グローバルな視点で見れば、戦争リスクは原油価格の高騰(インフレ要因)や世界経済の先行き不透明感につながり、投資家心理を冷え込ませるため、全体としてはリスクオフ要因として働きやすくなります。


今後の価格上昇はいつ頃期待できるか?

それでは、これらを踏まえた上で、暗号資産市場の本格的な上昇はいつ頃期待できるのでしょうか。

短期的な展望(〜2025年半ば):我慢の時期か

2025年の前半は、依然として一進一退の展開が続く可能性が高いでしょう。市場の方向性を決定づけるのは、以下のポイントになります。

  • FRBの金融政策スタンス: 何よりも重要なのが、FRBがいつ、どの程度のペースで利下げを開始するかです。市場が待ち望む最初の利下げが実施されれば、金融緩和期待から市場心理は大きく改善する可能性があります。しかし、その時期は依然として不透明です。
  • トランプ政権の具体的な人事と政策: 2025年1月の大統領就任後、誰をSEC委員長や財務長官に任命するのか、具体的な規制緩和策を打ち出すのかが注目されます。ポジティブな人事が実現すれば、短期的なラリー(上昇)のきっかけにはなり得ますが、持続性はマクロ経済次第です。
  • 現物ETH ETFの動向: 現物ビットコインETFに続き、現物イーサリアムETFの取引が開始された後の資金流入の規模も重要な指標となります。これが市場の予想を上回る規模であれば、アルトコイン市場全体を押し上げる要因となり得ます。

しかし、これらの好材料が出たとしても、貿易戦争懸念や根強いインフレという大きな逆風が吹いている限り、力強い上昇トレンドへの転換は難しいかもしれません。

中長期的な展望(2025年後半以降):上昇トレンドへの転換の可能性

市場が本格的な強気相場(ブルマーケット)に突入するためには、複数の条件が揃う必要があります。その時期として、2025年後半から2026年にかけてという見方が有力です。そのシナリオが実現するための条件は以下の通りです。

  1. 金融緩和サイクルの本格化(最重要): FRBがインフレ抑制に自信を深め、複数回にわたる継続的な利下げを開始すること。市場に潤沢な流動性(お金)が供給されることが、リスク資産全般、ひいては暗号資産市場を押し上げる最大のエンジンとなります。
  2. 規制の明確化と整備の進展: トランプ政権下で、暗礁に乗り上げていたステーブルコイン法案が成立したり、暗号資産の証券性の判断基準が明確化されたりするなど、企業や機関投資家が安心して事業や投資を行える「ルールの明確化」が進むこと。
  3. 半減期の供給削減効果の顕在化: 時間の経過とともに、2024年の半減期によるビットコインの供給削減効果が、需給バランスの引き締めを通じて価格に本格的に反映され始めること。歴史的に、半減期から12〜18ヶ月後に価格がピークを付ける傾向があります。
  4. 機関投資家の本格参入: 上記1〜3の条件が整うことで、これまで市場を窺っていた年金基金や保険会社といった、より保守的で巨大な資本を持つ機関投資家が、資産の一部として暗号資産をポートフォリオに組み入れ始めること。

これらの歯車が噛み合ったとき、市場は次の大きな上昇フェーズに入ると期待されます。

結論

「トランプ大統領が誕生すれば暗号資産は上がる」という期待は、あまりにも単純化されたシナリオでした。現実の市場は、大統領の意向という単一の要因だけで動くほど単純ではなく、マクロ経済、金融政策、規制動向、地政学リスクといった無数の要素が複雑に絡み合って価格を形成しています。

現在の価格の伸び悩みは、トランプ期待が剥落したというよりも、高金利とインフレ懸念という強力なマクロ経済の逆風が、期待感を打ち消している状況と見るべきです。さらに、トランプ政権がもたらすであろう貿易戦争のリスクは、短期的にはインフレ再燃を通じて、むしろ市場の足かせとなる可能性すらあります。

暗号資産市場が真の輝きを取り戻すには、「トランプ政権による規制緩和」という個別の好材料だけでは不十分です。市場全体を温める**「FRBによる金融緩和」という太陽が不可欠なのです。投資家は、短期的な政治の動向に一喜一憂することなく、より長期的かつ俯瞰的な視点で、これらの複合的な要因がどのように変化していくかを注意深く見守る必要があるでしょう。本格的な上昇トレンドの到来は、世界経済が安定を取り戻し、市場に再び潤沢な資金が流れ込み始める2025年後半以降**になる可能性が高いと、現時点では考えられます。

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