XRPの2025年末展望:訴訟終結後の未来と3つの法案(FIT21, ステーブルコイン法, CLARITY)の役割

2025年10月18日

XRPの2025年末展望:訴訟終結後の未来と3つの法案(FIT21, ステーブルコイン法, CLARITY)の役割

概要

現在はSEC訴訟は終結しXRPの法的リスクは払拭された。本レポートは、次の焦点である米国の「制度設計」に注目する。市場の管轄権を定める「FIT21法」、証券性を明確化する「CLARITY法」、そしてステーブルコインを規律する「GENIUS法」の3つが鍵となる。特にGENIUS法はRipple社のステーブルコイン「RLUSD」の成否に直結する。RLUSDはXRPと補完関係にあり、XRPLのDeFiを活性化させる。これらの法案の進捗とマクロ経済を踏まえた2025年末までの3つの価格シナリオを提示する。

免責事項

これは非常に投機的なトピックであり、価格予想は本質的に不可能です。本稿は特定の価格を断定するものではなく、2025年10月18日現在、SEC訴訟が終結したという事実を踏まえ、残りの2025年末までの期間およびその後に影響を与えうる米国の主要な暗号資産法案(FIT21法、CLARITY法、ステーブルコイン法案=GENIUS法など)と、Ripple社のステーブルコイン「RLUSD」の動向、その他の要因を分析し、シナリオを提示するものです。

投資に関するいかなる決定も、ご自身の責任において行う必要があります。これは金融アドバイスではありません。

序章:訴訟終結、次の焦点は「制度設計」

2025年10月18日現在、XRPの歴史における最大の障害であった米国証券取引委員会(SEC)との法廷闘争は「終結」しています。2023年の歴史的な部分的勝訴を経て、最終的な和解(あるいはSECの控訴断念)により、XRPは米国の司法において「証券ではない」という強力な地位を確立しました。

この勝利により、XRPは米国の主要取引所への再上場を果たし、機関投資家参入への道が(司法的には)開かれました。

しかし、訴訟の終結は「ゴール」ではなく、「新たなスタート」です。XRPが真に米国の金融インフラの一部として機能するためには、個別の判例だけでなく、国家としての包括的な「制度設計(ルール作り)」が不可欠です。

今、米国議会では、まさにこの未来の金融システムを定義する3つの重要な法案が審議されています。それが、「FIT21法」(市場全体の管轄権)、「GENIUS法」(ステーブルコイン規制)です。

特にGENIUS法は、Ripple社自身が発行を計画しているステーブルコイン「RLUSD」の運命を左右し、ひいてはXRP Ledger(XRPL)エコシステム全体の拡大と、XRP自体の実需にも直結する、極めて重要な法案となっています。

2025年末までの残り2ヶ月半、そして2026年にかけて、これら3大法案とRLUSDの動向こそが、訴訟終結後のXRPの価値を決定づける最大の要因となります。

FIT21法:市場全体の「管轄権」を定める最重要法案

「FIT21(Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act)」は、依然として最も包括的かつ重要な法案です。2024年5月に下院を超党派で通過しており、現在は上院での審議が焦点となっています。

FIT21法の核心(再確認):

  • 暗号資産の規制管轄権をSEC(証券)とCFTC(商品先物)の間で明確に分割します。
  • 「十分に分散化されている」ブロックチェーン(およびそのネイティブトークン)をCFTCの管轄下にある「デジタル・コモディティ(Digital Commodity)」として定義します。
  • 「分散化」の基準(例:特定の団体による支配力、開発者の貢献度など)を法的に定めることで、何が証券で何がコモディティかの予測可能性を高めます。

XRPへの影響(訴訟終結後):

  • SEC訴訟の終結は「司法判断」です。FIT21法の成立は「立法(法律)」によるお墨付きとなります。
  • XRP Ledger(XRPL)がこの法律に基づき「デジタル・コモディティ」として正式に分類されれば、XRPはビットコインやイーサリアム(先物ETF承認済み)と同等、あるいは「司法と立法の両方で認められた」初の主要資産として、機関投資家にとって最も安全な投資対象の一つとなります。
  • XRP ETF(上場投資信託)の承認プロセスにおいて、SECが「コモディティである」という法的根拠を覆すことが極めて困難になり、承認への道が大きく開かれます。
graph TD
    A(米国の暗号資産規制) --> B{管轄権の曖昧さ};
    B --> C[SEC(証券として規制)];
    B --> D[CFTC(商品として規制)];
    
    E(FIT21法案) -- "ルールを明確化" --> F["分類:デジタル・コモディティ (CFTCへ)"];
    E -- "ルールを明確化" --> G["分類:証券 (SECへ)"];
    
    H(XRP) -- "SEC訴訟終結(司法)" --> I(非証券の地位獲得);
    I -- "FIT21法成立(立法)" --> J(デジタル・コモディティとして認定);
    J --> K(機関投資家/ETF承認への最終障壁撤廃);

CLARITY法:証券法の「適用」を明確化する法案

「CLARITY for Digital Assets Act(デジタル資産のための明確化法)」は、FIT21とは異なる角度から証券性の問題をクリアにする法案です。これは新しい枠組みを作るというより、既存の証券法(Howeyテスト)をデジタル資産時代にどう「改修」して適用するか、に焦点を当てています。

CLARITY法の核心(改修版):

  • この法案は、あるデジタル資産が「投資契約(=証券)」として販売された後、その資産自体(トークン)が永久に証券として扱われるわけではない、という点を明確にしようとします。
  • Howeyテストの「他者の努力への期待」という要件に注目し、プロジェクトが「十分に分散化」された時点(=もはや特定の運営者の努力に依存していない状態)で、そのトークンは証券法の規制対象外(例:コモディティ)に転換できる、という法的根拠を整備します。
  • これは、SEC訴訟でトーレス判事が示した「XRP(トークン)自体は証券ではない」というロジックを、法律として成文化する試みとも言えます。

XRPへの影響(訴訟終結後):

  • SEC訴訟の判決は、このCLARITY法が目指す「トークンと証券取引の分離」を司法が認めた形です。
  • この法案が成立すれば、XRPが(過去に機関投資家向けに証券として販売されたことはあっても)現在、二次市場(取引所)で取引されるものは証券ではない、という判例が、法律によって恒久的に裏付けられます。
  • FIT21が「市場全体のルール」を定めるのに対し、CLARITY法は「個々の資産が証券からコモディティへ転換するプロセス」を明確にし、XRPの法的地位をさらに強固にします。

GENIUS法:ステーブルコイン規制と「RLUSD」の未来

ご指摘いただいた「GENIUS Act (Guiding Responsible Engagement for the US in Stablecoins Act)」、あるいはそれと並行して議論されている他のステーブルコイン規制法案(例:Clarity for Payment Stablecoins Act)は、XRPの未来にとって、FIT21と同等かそれ以上に重要な法案です。

なぜなら、これはRipple社が社運をかけて推進するステーブルコイン「RLUSD」の成否に直結し、XRPLエコシステム全体の設計思想に関わるからです。

GENIUS法(および関連法案)の核心:

  • 米国でドル建てステーブルコイン(USDC, USDT, RLUSDなど)を発行するためのルール(ライセンス、認可プロセス)を定めます。
  • 発行者に対し、100%以上の現金または短期国債による厳格な準備金の保持を義務付けます。
  • 発行者に対する連邦レベルでの監督官庁(FRB=連邦準備制度理事会やOCC=通貨監督庁など)を明確にし、定期的な監査を義務付けます。
  • これにより、ステーブルコインは「規制された安全なデジタル・ドル」として、従来の金融システムに組み込まれることになります。

RLUSDへの直接的影響(最大の追い風):

  • Ripple社は、RLUSDを「透明性が高く、規制に準拠した」ステーブルコインとして市場に投入することを目指しています。
  • GENIUS法が成立すれば、RLUSDは発行と同時に「米国連邦法の認可を受けた」という最高の信頼性を得ることができます。これは、規制のグレーゾーンで拡大してきた既存のステーブルコイン(特にUSDT)に対する決定的な優位性となります。
  • Ripple社は、金融機関との長年の関係性や送金ライセンスを保有している強みがあり、GENIUS法が定める発行体としての要件(準備金の管理、監査体制)をクリアすることは比較的容易と見られます。

XRPエコシステムとRLUSDの関係(競合ではなく「補完」):

  • RLUSDの登場は、XRPの役割を終わらせるものではなく、むしろXRPの「実需」を強化するものです。
  • 役割分担:
    1. RLUSD(ステーブルコイン): 「価値の保存」および「法定通貨のデジタルな入口/出口(オン/オフランプ)」として機能します。米ドルそのものとして扱えます。
    2. XRP(デジタル・コモディティ): 「価値の移転(ブリッジ)」および「中立的な基軸資産」として機能します。どの国にも属さないため、異なる通貨(ドル、ユーロ、円)や、異なるステーブルコイン(RLUSD, USDC, EURC)同士を交換する際の「橋渡し役(ブリッジ資産)」として最適です。
  • XRPL上のDeFiの起爆剤: RLUSDがXRPL上でネイティブ発行されることで、XRPLのAMM(自動マーケットメーカー)やDEX(分散型取引所)は、最も信頼できる「米ドル」の流動性を得ることになります。「XRP / RLUSD」のペアは、XRPL上で最も主要な取引ペアとなり、DeFiエコシステム全体が活性化します。
flowchart TD
    A(GENIUS法成立) --> B["規制準拠ステーブルコインのルール確立"];
    
    subgraph "Ripple社への影響"
        B --> C(Ripple社 **RLUSD**);
        C -- "米連邦法の認可" --> D(最高の信頼性を獲得);
        D --> E(USDC, USDTに対する優位性);
    end
    
    subgraph "XRPLエコシステムへの影響"
        D -- "XRPL上で発行" --> F(XRPLに信頼できるドルが流入);
        F --> G(XRPLのAMM/DEXが活性化);
        G -- "主要ペア誕生" --> H(「XRP / RLUSD」ペア);
    end

    subgraph "XRP(本体)への影響"
         H --> I(XRPの流動性と実用性(DeFi)が向上);
         B --> J(国際送金(Ripple Payments)での活用);
         J -- "例:USD→RLUSD→XRP→MXN" --> K(XRPのブリッジ機能がよりシームレスに);
    end

SEC訴訟の終結(再確認)

2025年10月18日現在、この事実はXRPの全ての前提を変えました。

訴訟終結がもたらしたもの(事実):

米国市場での復活: Coinbase、Krakenなど米国の主要取引所での完全再上場。

機関投資家の参入障壁(司法的)の撤廃: 「証券リスク」が消滅。

Ripple Payments(国際送金)の信頼性向上: 提携金融機関が規制リスクなくXRPを利用可能に。

訴訟終結は、XRPが他の暗号資産と同じスタートラインに立つための最低条件でした。そして今、XRPは「司法のお墨付き」というアドバンテージを持って、次のステージ(法制化)に進んでいます。

2025年末(残り2ヶ月半)のシナリオ(RLUSDの影響を反映)

SEC訴訟の敗訴シナリオが消滅した現在、2025年末までの残り期間は、これら3大法案の「成立期待」と「マクロ経済」、そして「RLUSDの進捗」の組み合わせで決まります。

シナリオ1:超強気(The Perfect Legislative Storm & RLUSDの始動)

発生条件:

  1. (済)SEC訴訟の終結(Ripple社に有利な形)。
  2. FIT21法が上院で予想外に採決され、成立への期待感が最高潮に達する(あるいは成立する)。
  3. GENIUS法(ステーブルコイン法案)も同時に成立。これにより、Ripple社のRLUSDが「米連邦認可」のステーブルコインとして本格的にローンチされ、大手取引所への上場や機関投資家による採用が発表される。
  4. マクロ経済が安定し、FRBが利下げを示唆。年末にかけて市場全体が強気相場(アルトコインシーズン)に突入する。
  5. XRP ETFの具体的な申請が大手資産運用会社から発表される。

結果の予想:

  • 「司法(訴訟終結)」と「立法(FIT21, GENIUS)」の両輪が揃います。
  • XRPは「デジタル・コモディティ(FIT21)」として、RLUSDは「規制準拠ステーブルコイン(GENIUS)」として、Rippleエコシステム全体が米国のお墨付きを得ます。
  • RLUSDの始動がXRPLのDeFiを活性化させ、XRP自体の実需(ブリッジ資産、基軸通貨)を爆発的に高めます。
  • 過去最高値(約3.8ドル)を大幅に超え、$5〜$10、あるいはそれ以上といった未知の領域を目指す展開が期待されます。

シナリオ2:中立(法案停滞と市場の様子見)

発生条件:

  1. (済)SEC訴訟は終結(織り込み済み)
  2. FIT21法、GENIUS法ともに上院での審議が停滞し、成立は2026年以降に持ち越される。
  3. RLUSDはローンチされたものの、GENIUS法が未成立のため「認可」のお墨付きがなく、USDCなどとの差別化に苦戦する。
  4. マクロ経済は高金利・インフレ懸念で一進一退となり、年末ラリーが不発に終わる。

結果の予想:

  • 訴訟リスクは無いものの、次の大きなカタリストである「法制化」と「RLUSDの本格普及」が遅れるため、市場は様子見ムードとなります。
  • 価格はビットコインや市場全体の動向に連動するものの、単独での大きな上昇は限定的となります。
  • 2025年末は、$1.5〜$3.0といった、過去最高値手前でのレンジ相場となる可能性があります。

シナリオ3:弱気(マクロ経済の悪化)

発生条件:

  1. (済)SEC訴訟は終結している。
  2. しかし、法案審議の遅れに加え、予期せぬ地政学的リスクや金融不安(スタグフレーション懸念など)が再燃し、FRBが金融引き締めに転じる。
  3. 暗号資産市場全体がリスクオフ(リスク回避)ムードとなり、全面安となる。

結果の予想:

  • XRP固有の悪材料(例:訴訟敗訴)は無いため下値は限定的ですが、市場全体の暴落には引きずられます。
  • 訴訟終結によって得た上昇分の一部を失い、価格が$1.0近辺、あるいはそれ以下に一時的に後退するシナリオも想定されます。

結論(最終修正版)

2025年10月18日現在、XRPは「SEC訴訟」という最大の重しを外し、新たなステージに立っています。この歴史的勝利は、XRPの価格基盤を強固なものにしました。

残りの2025年末、そして2026年にかけてのXRPの運命は、もはや司法ではなく、米国議会による「制度設計」にかかっています。

  1. FIT21法は、XRPを「デジタル・コモディティ」として法的に定義し、ETF承認への道を開きます。
  2. CLARITY法は、その地位を既存の証券法体系の中で補強します。
  3. そしてGENIUS法(ステーブルコイン法案)は、Ripple社の戦略的切り札である「RLUSD」に連邦レベルの「お墨付き」を与え、XRPLエコシステム全体(DeFi、決済)を活性化させるための「舞台装置」を整えます。

2025年末は、これら3つの法案、特にGENIUS法によるRLUSDの動向が、XRPの「実需」をどれだけ市場に納得させられるかを試す、極めて重要な局面となるでしょう。

-XRP