概要

Solidity学習の最初の壁「開発環境の構築」を不要にする、ブラウザベースのIDE「Remix」を紹介します。ツールインストール一切なしで、Solidity開発を始める方法を解説。
簡単な「Hello World」コントラクトの作成、コードのコンパイル、そして仮想ブロックチェーンへのデプロイまで、一連の流れをステップ形式で完全ガイド。誰でも「動いた!」という成功体験を得られる、Web3開発の第一歩に最適な実践レポートです。
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Solidity学習講座:最終版 目次(全20話)
基礎編 第1話:未来のインターネットへようこそ!Solidityとスマートコントラクトの全体像 第2話:準備は1分!ブラウザだけで開発できる「Remix IDE」の基本操作 第3話:記念すべき初コント ...
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はじめに
第1話では、スマートコントラクトが拓くWeb3.0の壮大な世界と、その開発言語であるSolidityの重要性についてお話ししました。未来への期待に胸を膨らませた一方で、こんな不安もよぎったかもしれません。
「新しい言語を学ぶには、複雑な開発環境のセットアップが必要なんだろうな…」
フリーランスエンジニアのあなたなら、新しいプロジェクトのたびに発生する環境構築の大変さは身に染みていることでしょう。しかし、ご安心ください。Solidityの世界への第一歩は、あなたが思っているよりもずっとシンプルです。
今回は、あなたのウェブブラウザさえあれば、いますぐにでもスマートコントラクト開発を始められる魔法のようなツール、「Remix IDE」を紹介します。この記事を読み終える頃には、あなたは自分の手で書いたプログラムをブロックチェーン上で動かす、という感動的な体験を手にしているはずです。
開発のハードルをゼロにする「Remix IDE」とは?
Remix IDE(リミックス・アイディーイー)は、イーサリアム財団が公式にサポートしている、スマートコントラクト開発のための**統合開発環境(IDE)**です。
最大の特徴は、これが完全にブラウザ上で動作するということ。つまり、あなたのPCにコンパイラやライブラリ、その他たくさんのツールをインストールする必要が一切ないのです。
Remixが初心者にとって最高の学習ツールである理由は3つあります。
- セットアップ不要: URLにアクセスするだけ。面倒な環境構築から解放されます。
- オールインワン: コードを書くエディタ、書いたコードを機械が読める形式に変換するコンパイラ、そして動作を試すための仮想的なブロックチェーン環境まで、すべてが一つになっています。
- 豊富な学習材料: 最初からいくつかのサンプルコードが含まれており、プロが書いたコードを参考にしながら学習を進められます。
さあ、理屈はこれくらいにして、早速Remixの世界に飛び込んでみましょう!
Remixを使ってみよう!初めてのスマートコントラクト作成ガイド
ここからは、ステップ・バイ・ステップで進めていきます。ぜひ、この記事を隣に表示しながら、実際に手を動かしてみてください。
ステップ1:Remixにアクセスする
まず、お使いのウェブブラウザで以下のURLを開いてください。
すると、英語の画面が表示されるはずです。最初は情報量が多くて戸惑うかもしれませんが、大丈夫。使う場所は限られています。
ステップ2:画面構成を理解する
画面は大きく3つのエリアに分かれています。
- アイコンメニュー(左端): ファイルを探す「File Explorers」、コードをコンパイルする「Solidity compiler」、そしてブロックチェーンに設置する「Deploy & run transactions」の3つを主に使います。
- メインパネル(中央): ここがコードを書くためのエディタです。
- ターミナル(下部): プログラムを実行した結果などが表示されるエリアです。
ステップ3:最初のファイルを作成する
- 左端のアイコンメニューから、一番上の**「File Explorers」**をクリックします。
contracts
というフォルダの下に、いくつか.sol
という拡張子のファイルがすでにあるのが見えます。これらはサンプルです。contracts
フォルダの近くにある、新しいファイルを作成するアイコンをクリックし、ファイル名をHelloWorld.sol
としてEnterキーを押してください。- 中央のメインパネルに、今作成した空のファイルが開きます。
ステップ4:記念すべき初コードを書く
開いた HelloWorld.sol
のエディタに、以下のコードをそのままコピー&ペースト、または手で打ち込んでみてください。
Solidity
// SPDX-License-Identifier: MIT
pragma solidity ^0.8.20;
contract HelloWorld {
string public message = "Hello, Web3 World!";
}
たったこれだけです。これが、あなたの最初のスマートコントラクトになります。 各行の意味は次回以降で詳しく解説しますが、ここではざっくりと「Hello, Web3 World!
というメッセージをブロックチェーン上に保存するプログラムなんだな」と理解できれば十分です。
コンパイル、そしてデプロイへ(魔法が起きる瞬間)
コードが書けたら、いよいよこれを仮想ブロックチェーン上で動かしてみましょう。
ステップ5:コードをコンパイルする
「コンパイル」とは、人間が書いたコードを、コンピュータが理解できる言葉(バイトコード)に翻訳する作業です。
- 左端のアイコンメニューから、上から2番目の**「Solidity compiler」**(SolidityのSの字のようなアイコン)をクリックします。
- 「Compiler」のバージョンが、先ほどコードに書いた
0.8.20
以降になっていることを確認してください。 - 青い**「Compile HelloWorld.sol」**ボタンをクリックします。
何もエラーが出ず、アイコンに緑色のチェックマークが付けばコンパイル成功です!
ステップ6:ブロックチェーンにデプロイする
「デプロイ」とは、コンパイルしたプログラムをブロックチェーン上に設置(アップロード)する作業です。
- 左端のアイコンメニューから、上から3番目の**「Deploy & run transactions」**(イーサリアムのロゴのようなアイコン)をクリックします。
ENVIRONMENT
という項目が**「Remix VM (Shanghai)」**になっていることを確認してください。これはRemixが用意してくれている、テスト用の仮想ブロックチェーン環境です。ACCOUNT
という項目には、テスト用の仮想ETHがたくさん入ったアカウントが用意されています。- オレンジ色の**「Deploy」**ボタンをクリックしてください。
下部のターミナルに緑のチェックマーク付きでログが表示されたら、デプロイ成功です!
ステップ7:コントラクトと対話する
デプロイに成功すると、「Deploy & run transactions」タブの下部に**「Deployed Contracts」**というセクションが現れます。
そこに HELLOWORLD AT 0x...
という項目があるはずです。これが、あなたがブロックチェーン上に設置したコントラクトの実体です。
- その項目をクリックして展開します。
message
という水色のボタンが見えますね。これが、先ほどコードに書いたmessage
という変数です。- この**
message
ボタンをクリック**してみてください。
するとどうでしょう?ボタンの下に 0: string: Hello, Web3 World!
と表示されました! これは、あなたがデプロイしたスマートコントラクトから、保存されているデータを読み出すことに成功した証拠です。
まとめ:あなたはもう、Web3開発者の一員です
おめでとうございます! あなたは今、たった数分で、そしてブラウザ一つで、以下の全てをやり遂げました。
- 開発環境の準備
- スマートコントラクトのコーディング
- コンパイル
- ブロックチェーンへのデプロイ
- デプロイしたコントラクトとの対話
この「できた!」という体験こそが、新しい技術を学ぶ上で何よりのガソリンになります。
今回は、まずツールに慣れることを目的に、コードの詳しい解説はしませんでした。次回、**第3話「記念すべき初コントラクト!Hello World
をブロックチェーンに刻もう」**では、今回使ったコード一行一行の意味をじっくりと解き明かし、スマートコントラクトの基本的な構造について理解を深めていきます。
今日感じた小さな感動を忘れずに、次のステップへ進みましょう!
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Solidity学習講座:最終版 目次(全20話)
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