概要

DeFi学習者が次のステップへ進むためのDEX(分散型取引所)完全ガイドです。中央集権型取引所(CEX)との違いから、DEXの心臓部であるAMM(自動マーケットメーカー)の仕組みまでを図解で分かりやすく解説。
資産の自己管理やパーミッションレスといったメリットだけでなく、インパーマネントロスやガス代などのデメリットにも深く踏み込みます。さらに、UniswapやPancakeSwapなど、特徴の異なる5つのおすすめDEXを厳選し、その魅力と始め方を具体的に紹介します。
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DeFi学習20ステップ目次
DeFi(分散型金融)の基本から応用までを20ステップで完全解説!ウォレット作成、DEXでの取引、レンディング、イールドファーミング、リスク管理まで、初心者でも着実に知識を習得し、未来の金融テクノロジーを実践的に学べるロードマップです。
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目次
はじめに
DeFi(分散型金融)の世界へようこそ!これまでのステップでブロックチェーンや仮想通貨の基本を学んできたあなたなら、次に挑戦すべきは**DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)**です。
「銀行や取引所がなくても、個人間で自由に資産を交換できる」 「面倒な口座開設や本人確認は一切不要」 「プログラムに従って、すべてが自動で、透明に動く世界」
まるでSFのような話に聞こえるかもしれませんが、DEXはこれを現実のものにしました。中央集権的な管理者を必要とせず、ユーザー同士が直接、かつ安全に仮想通貨を取引できるプラットフォーム、それがDEXです。
しかし、その革新的な仕組みの裏には、知っておくべきリスクや独特のルールも存在します。この記事では、DeFiの核心ともいえるDEXについて、以下の点を徹底的に、そして分かりやすく解説していきます。
- DEXの基本的な仕組み:なぜ「銀行いらず」なのか?CEX(中央集権型取引所)との違いは?
- メリットとデメリット:どんな利点があり、どのような危険が潜んでいるのか?
- AMM(自動マーケットメーカー):DEXの心臓部であるこの仕組みを、図解で直感的に理解する。
- 【厳選】おすすめDEX:数あるDEXの中から、特徴の異なる5つのプラットフォームを訴求力高く紹介。
- DEXのはじめ方:具体的なステップに沿って、今日からDEXデビューできるようガイド。
この記事を読み終える頃には、あなたはDEXの仕組みを深く理解し、自信を持ってDeFiの新たな扉を開けるようになっているはずです。さあ、未来の金融の形を一緒に覗いてみましょう!
第1章:DEX(分散型取引所)とは? CEXとの決定的な違い
まず、DEXがどのようなものなのか、私たちに馴染みのある**CEX(Centralized Exchange:中央集権型取引所)**と比較しながら見ていきましょう。CEXの代表例は、CoincheckやbitFlyer、海外ではBinanceなどです。
1.1 管理者のいない取引所
CEXは、その名の通り「中央集権的」な運営母体(企業)が存在します。私たちがCEXで取引する際、実際にはその企業のサーバー上にあるデータベースで取引が記録され、私たちの資産も企業の管理するウォレットに保管されています。銀行にお金を預けるのと同じような感覚です。
一方、DEXには特定の運営母体が存在しません。すべての取引はブロックチェーン上のスマートコントラクト(あらかじめ設定されたルールに従って自動的に実行されるプログラム)によって執行されます。取引の仲介者はおらず、ユーザー同士が直接(P2P:ピアツーピア)でつながるのです。
これにより、CEXが抱える以下のような問題点を解決しようとしています。
- カウンターパーティリスク:運営企業の破綻やハッキングによる資産の喪失リスク。
- 検閲:運営企業の判断で、特定の取引が拒否されたり、口座が凍結されたりするリスク。
- 透明性の欠如:取引の裏側がブラックボックスであり、運営側による不正操作の可能性。
1.2 資産は常に自分の手の中に(ノンカストディアル)
CEXとDEXの最も重要な違いは、資産の管理方法にあります。
- CEX(カストディアル): あなたの資産は取引所が管理します。取引に必要なIDやパスワードを忘れても、サポートに連絡すれば再設定できるでしょう。しかし、それは裏を返せば、取引所があなたの資産を完全にコントロールしていることを意味します。
- DEX(ノンカストディアル): あなたの資産は、あなた自身が管理するウォレット(例:MetaMask)の中にあり続けます。DEXを利用する際は、このウォレットを接続するだけ。取引が完了するまで、資産が自分のウォレットから離れることはありません。これは「Not your keys, not your coins(あなたの鍵でなければ、あなたのコインではない)」という仮想通貨界の格言を体現しています。
この「ノンカストディアル」こそが、DEXが「銀行いらず」と言われる所以であり、最大の魅力なのです。
CEXとDEXの比較
特徴 | CEX(中央集権型取引所) | DEX(分散型取引所) |
管理者 | 企業(運営母体) | なし(スマートコントラクト) |
資産管理 | カストディアル(取引所が管理) | ノンカストディアル(自己管理) |
口座開設 | 必要(本人確認/KYCあり) | 不要(ウォレット接続のみ) |
取引方式 | オーダーブック(板取引)が主流 | AMM(自動マーケットメーカー)が主流 |
上場審査 | 運営企業による厳しい審査 | 誰でも可能(パーミッションレス) |
ハッキングリスク | 取引所のサーバーが標的 | スマートコントラクトの脆弱性が標的 |
透明性 | 低い(内部データ) | 非常に高い(ブロックチェーン上で公開) |
利便性 | 法定通貨の入出金が可能、サポート充実 | 英語が基本、自己責任、ガス代など独特の概念 |
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CEXとDEXはどちらが優れているというわけではなく、それぞれに異なる特徴と役割があります。まずはCEXで仮想通貨を購入し、それを自分のウォレットに送金してDEXの世界に足を踏み入れる、というのが一般的な流れです。
第2章:DEXの心臓部! AMM(自動マーケットメーカー)の仕組み
CEXでは、買いたい人と売りたい人の注文を「板」に並べてマッチングさせるオーダーブック方式が一般的です。しかし、流動性(取引の活発さ)が低いと、なかなか買い手や売り手が見つからず、取引が成立しにくいという問題がありました。
そこでDEXの多くが採用しているのが、**AMM(Automated Market Maker:自動マーケットメーカー)**という画期的な仕組みです。
2.1 取引相手は「流動性プール」
AMMでは、取引の相手は他のユーザーではありません。取引相手となるのは、流動性プールと呼ばれるスマートコントラクトです。
このプールには、**流動性プロバイダー(LP:Liquidity Provider)**と呼ばれる有志のユーザーたちによって、2種類のトークンがペアで預け入れられています。例えば、「ETH/DAIプール」には、たくさんのETHとDAIが蓄えられています。
ユーザーがETHをDAIに交換(スワップ)したい場合、このプールにETHを投入します。すると、AMMのアルゴリズムが自動的に交換レートを計算し、見合った量のDAIをユーザーのウォレットに送金するのです。
graph TD subgraph "DEXのAMM(自動マーケットメーカー)モデル" A[ユーザーA<br>「ETHをDAIに交換したい」] -->|1. ETHを投入| P(流動性プール<br>ETH / DAI); P -->|2. 計算されたDAIを放出| A; LP1[流動性プロバイダー1] -->|ETHとDAIをペアで提供| P; LP2[流動性プロバイダー2] -->|ETHとDAIをペアで提供| P; LP3[流動性プロバイダー3] -->|ETHとDAIをペアで提供| P; end
この仕組みにより、取引したい相手(カウンターパーティ)がいなくても、プールに資産がある限り、いつでも好きな時にトークンを交換できるのです。
2.2 レートを決める魔法の数式:xtimesy=k
では、AMMはどのようにしてトークンの交換レートを決めているのでしょうか?多くのAMMが採用しているのが、「**Constant Product Market Maker(CPMM)」**というアルゴリズムです。
これは、流動性プールに預けられている2種類のトークンの量をそれぞれ x, y としたとき、その積 k が常に一定になるようにレートを調整するというものです。
x×y=k
この k は「不変量(Invariant)」と呼ばれます。
簡単な例で見てみましょう。
ある流動性プールに 10 ETH と 20,000 DAI が預けられているとします。
- x (ETHの量) = 10
- y (DAIの量) = 20,000
- k (不変量) = 10times20,000=200,000
この時点でのETHの価格は、DAIの量 ÷ ETHの量
で 20,000 ÷ 10 = 2,000 DAI
となります。
ここに、あるトレーダーが 1 ETH を使ってDAIを買おうとしました。
- トレーダーがプールに 1 ETH を投入します。プールのETHは 10+1=11 ETHになります。
- 数式 xtimesy=k を維持するため、AMMはプールのDAIの量を計算し直します。 11timesy=200,000 y=200,000div11approx18,181.8 DAI
- もともとプールには 20,000 DAI があったので、トレーダーが受け取るDAIは、 20,000−18,181.8=1,818.2 DAI となります。
この取引により、プールの構成は 11 ETH と 18,181.8 DAI になりました。新しいETHの価格は 18,181.8 ÷ 11 ≈ 1,652.9 DAI
となり、ETHの価格が下がった(DAIの価値が上がった)ことがわかります。
このように、AMMは需要と供給のバランスに応じて、アルゴリズムに基づいて自動的に価格を調整していくのです。大量の注文が入れば入るほど、価格の変動(スリッページ)が大きくなります。
第3章:DEXを利用する5つのメリット
DEXの革新的な仕組みは、私たちユーザーに多くのメリットをもたらします。
✅ メリット1:資産の完全なコントロール(ノンカストディアル)
これは最大のメリットです。あなたの資産は、あなたのウォレットの中で安全に保管されます。取引所の破綻や、内部の不正によって資産を失うリスクから解放されます。秘密鍵を自分で管理する限り、誰もあなたの資産に触れることはできません。
✅ メリット2:誰でも利用可能(パーミッションレス)
DEXの利用に、国籍、年齢、身分は関係ありません。必要なのは、インターネット接続と仮想通貨ウォレットだけ。面倒な口座開設手続きや、個人情報の提出(KYC)は不要です。これにより、銀行口座を持てない人々にも金融サービスへのアクセスを提供する「金融包摂」の理念を実現します。
✅ メリット3:高い透明性
全ての取引履歴はブロックチェーン上に記録され、誰でも閲覧することができます。これにより、取引所側による価格操作などの不正行為が極めて困難になります。どのような取引が、いくらで、いつ行われたのか、すべてがガラス張りです。
✅ メリット4:新規トークンの上場が早い(草コインの宝庫)
CEXでは厳しい審査を経てトークンが上場しますが、DEXでは誰でも自由に流動性プールを作成し、新しいトークンを上場させることができます。これは、将来有望なプロジェクトのトークンを、価格が上昇する前の早い段階で手に入れるチャンスがあることを意味します。いわゆる「草コイン」や「ミームコイン」の多くは、まずDEXに上場します。
✅ メリット5:流動性提供による収益機会(イールドファーミング)
DEXはただ取引するだけの場所ではありません。あなたが流動性プロバイダー(LP)になることで、収益を得ることも可能です。
LPとしてトークンペアをプールに預けると、その見返りとしてLPトークンがもらえます。これは、あなたがプールに資産を提供していることの証明書のようなものです。そして、そのプールで発生した取引手数料の一部を、LPトークンの保有量に応じて受け取ることができるのです。
さらに、このLPトークンを別の場所に預け入れる(ステーキングする)ことで、追加の報酬(ガバナンストークンなど)を得ることをイールドファーミングや流動性マイニングと呼びます。これはDeFiにおける非常に人気のある収益戦略の一つです。
第4章:DEXを利用する5つのデメリットと注意点
自由と革新には、必ず責任とリスクが伴います。DEXを利用する前に、以下のデメリットを必ず理解しておきましょう。
⚠️ デメリット1:すべてが自己責任
ノンカストディアルであることの裏返しです。ウォレットの秘密鍵やシードフレーズを紛失したり、盗まれたりした場合、あなたの資産は永久に失われます。誰も助けてはくれません。CEXのようにパスワードのリセットはできないのです。これらの管理は、金庫の鍵を自分で管理するのと同じくらい、あるいはそれ以上に厳重に行う必要があります。
⚠️ デメリット2:ガス代(取引手数料)
ブロックチェーン上で取引を承認・記録してもらうためには、ネットワークのマイナーやバリデーターに手数料を支払う必要があります。これをガス代と呼びます。
特にイーサリアムチェーン上のDEXでは、ネットワークが混雑するとこのガス代が数千円から数万円に高騰することがあります。少額の取引では、手数料負けしてしまう可能性も十分にあります。この問題を解決するため、最近ではレイヤー2(L2)と呼ばれるガス代の安いブロックチェーン上で稼働するDEXが人気を集めています。
⚠️ デメリット3:インパーマネントロス(変動損失)
これは流動性プロバイダー(LP)が直面する最大のリスクです。非常に重要な概念なので、少し詳しく解説します。
インパーマネントロスとは、「流動性プールに資産を預けていた場合と、ただウォレットに保有し続けていた場合(HODL)とを比較した際に生じる潜在的な損失」のことです。
LPとして預けた2種類のトークンの価格比が、預けた時点から大きく変動すると発生します。
簡単な例: あなたが「1 ETH = 2,000 DAI」の時に、「1 ETH と 2,000 DAI」を流動性プールに提供したとします(合計価値 4,000ドル)。
その後、市場でETHの価格が急騰し、「1 ETH = 8,000 DAI」になったとします。
- もしHODLしていたら: あなたの資産は 1 ETH (8,000 DAI相当) + 2,000 DAI = 10,000ドルの価値になっていました。
- LPとして預けていると: AMMの仕組み(xtimesy=k)により、プール内のあなたの資産は自動的にリバランスされ、価格の安いDAIが多くなり、価格の高いETHが少なくなります。計算すると、あなたの持ち分は「0.5 ETH と 4,000 DAI」のようになります。この時点での価値は 0.5 ETH (4,000 DAI相当) + 4,000 DAI = 8,000ドルです。
この差額、2,000ドルがインパーマネントロスです。
もちろん、LPは取引手数料を報酬として得られるため、この損失を相殺できる場合もあります。しかし、価格変動が激しいトークンペアに流動性を提供する際は、このリスクを常に念頭に置く必要があります。
⚠️ デメリット4:スリッページ
注文を出した時の価格と、実際に取引が成立した時の価格の差をスリッページと呼びます。これは、あなたが注文を送信してから、その取引がブロックチェーン上で承認されるまでのわずかな時間差で価格が変動するために起こります。流動性が低いプールや、一度に大量の注文を出すと、スリッページは大きくなる傾向があります。多くのDEXでは、許容できるスリッページの割合を自分で設定できます。
⚠️ デメリット5:詐欺プロジェクト(ラグプル)のリスク
誰でもトークンを上場できるということは、詐欺師にとっても好都合な環境です。開発者が流動性プールを作成して投資家から資金を集めた後、突然すべての資金を引き抜いて逃亡する詐欺を「ラグプル(Rug Pull)」と呼びます。魅力的なリターンを謳う新しいプロジェクトには特に注意が必要です。投資する前に、プロジェクトの信頼性(公式サイト、ホワイトペーパー、開発チーム、コミュニティの活動など)を自分自身で徹底的に調査(DYOR:Do Your Own Research)することが不可欠です。
第5章:【厳選】おすすめDEX 5選!特徴と選び方
世界には数え切れないほどのDEXが存在します。ここでは、それぞれ異なるブロックチェーン上で稼働し、独自の特徴を持つ代表的なDEXを5つ厳選してご紹介します。
選び方のポイント
DEXを選ぶ際は、以下の点を比較検討すると良いでしょう。
- 対応ブロックチェーン: ガス代や処理速度に直結します。
- 流動性の高さ(TVL): TVL(Total Value Locked:預かり資産総額)が高いほど、取引が安定しスリッページが起こりにくくなります。
- 手数料: スワップ手数料やLP手数料の体系。
- UI/UX: 初心者でも直感的に操作できるか。
- 独自機能: 他のDEXにはない魅力的な機能があるか。
1. Uniswap (ユニスワップ) - DEXの絶対王者 👑
- 対応チェーン: Ethereum, Polygon, Arbitrum, Optimismなど多数
- 特徴: DEXの代名詞であり、圧倒的なTVLと知名度を誇ります。DeFiの世界に足を踏み入れるなら、まず触れておくべき存在です。
- 訴求ポイント:
- 集中流動性 (Concentrated Liquidity): Uniswap V3で導入された画期的な機能。従来のAMMでは流動性が0から無限大の価格帯に均等に供給されていましたが、V3ではLPが任意の価格範囲を指定して流動性を供給できます。例えば、価格が常に$0.99〜$1.01の間で動くステーブルコインペアの場合、その範囲に資本を集中させることで、少ない資金でも効率的に手数料を稼ぐことが可能になります。これは資本効率を劇的に向上させるイノベーションです。
- 信頼と実績: 数々の市場の荒波を乗り越えてきた実績と、強固なセキュリティが信頼の証。多くのDeFiプロトコルがUniswapを基盤としています。
- 豊富なトークンペア: 事実上、あらゆるERC-20トークンが取引可能。新しいプロジェクトの多くが最初に流動性を提供する場所でもあります。
こんな人におすすめ:
- DeFiの王道を体験したい人
- 資本効率を最大限に高めて流動性提供を行いたい上級者
- 最新かつ多様なトークンを取引したい人
2. Curve Finance (カーブ・ファイナンス) - ステーブルコイン交換の達人 💵
- 対応チェーン: Ethereum, Polygon, Avalancheなど多数
- 特徴: ステーブルコイン同士の交換に特化したDEX。DAI, USDC, USDTなど、価値が米ドルなどに連動するトークンの交換において、右に出るものはいません。
- 訴求ポイント:
- 驚異的な低スリッページ: Curveはステーブルコインのように価格がほぼ変動しない資産に最適化された独自のAMMアルゴリズムを採用しています。これにより、Uniswapなど他のDEXと比較して、桁違いに低いスリッページで大量のステーブルコインを交換できます。DeFiで大規模な運用を行うプロトコルや大口投資家にとって不可欠なインフラです。
- veCRVモデルとガバナンス: 独自トークンCRVをロック(Vote-escrowed)することでveCRVを取得し、ガバナンスへの参加権や、自身が流動性を提供しているプールへの手数料報酬を**ブースト(最大2.5倍)**する権利を得られます。この巧妙なトークノミクスは「Curve戦争」と呼ばれるほど、多くのプロトコルがveCRVを奪い合う状況を生み出しました。
こんな人におすすめ:
- ステーブルコインを頻繁に交換する人
- とにかく低スリッページで取引したい大口投資家
- DeFiの複雑で巧妙なトークノミクスの世界に触れたい人
3. PancakeSwap (パンケーキスワップ) - BNBチェーンのエンターテイナー 🥞
- 対応チェーン: BNB Chain, Ethereum, Aptosなど
- 特徴: BNB Chain(旧Binance Smart Chain)で圧倒的なシェアを誇るDEX。イーサリアムに比べて非常に安いガス代と高速な取引が魅力で、多くの個人投資家をDeFiの世界に引き込みました。
- 訴求ポイント:
- 初心者フレンドリーで低コスト: ポップで親しみやすいUIと、イーサリアムの数十分の一から数百分の一という圧倒的な低ガス代が最大の魅力。少額からでも気軽にDeFiを始めたい初心者にとって、最適な入門用DEXと言えるでしょう。
- 豊富な独自機能: 単なるスワップ機能に留まらず、新規プロジェクトのトークンを割安で購入できるIFO (Initial Farm Offering)、宝くじ(Lottery)、NFTマーケットプレイスなど、ユーザーを飽きさせないエンターテイメント機能が満載です。
- BNBエコシステムの中心: BNB Chain上で展開される多くのプロジェクトが、PancakeSwapを中心にエコシステムを構築しており、チェーンの動向を探る上で欠かせない存在です。
こんな人におすすめ:
- 初めてDEXに触れる初心者
- ガス代を気にせず、少額から色々な機能を試したい人
- BNB Chainエコシステムのプロジェクトに投資したい人
4. Trader Joe (トレーダー・ジョー) - Avalancheが生んだ革新者 ⛏️
- 対応チェーン: Avalanche, Arbitrum, BNB Chain
- 特徴: Avalancheチェーンで生まれ、急速に成長したDEX。常に新しい技術やモデルを意欲的に取り入れることで知られています。
- 訴求ポイント:
- Liquidity Book (LB) モデル: Uniswap V3の集中流動性をさらに進化させた独自のAMMモデル。流動性を不連続な「ビン(Bin)」と呼ばれる単位で管理することで、スリッページゼロの取引を可能にしました。また、LPは特定の価格帯に集中して流動性を提供することで、より高い手数料収益を狙えます。この技術的優位性が多くのトレーダーを惹きつけています。
- ワンストップのDeFiハブ: スワップ機能だけでなく、レンディング(貸し借り)プラットフォームの「Banker Joe」やNFTマーケットプレイスなど、DeFiに必要な機能がワンストップで提供されており、利便性が非常に高いです。
こんな人におすすめ:
- 最先端のAMM技術に触れたい人
- Avalancheエコシステムに興味がある人
- スワップもレンディングも一つの場所で完結させたい効率重視の人
5. Orca (オルカ) - Solanaの使いやすさNo.1 🐳
- 対応チェーン: Solana
- 特徴: Solanaチェーンを代表するDEXの一つ。共同創業者の一人が日本人であることでも知られています。**「誰にとっても使いやすいDEX」**をコンセプトに掲げており、そのUI/UXは高く評価されています。
- 訴求ポイント:
- Solanaによる超高速・激安体験: Solanaブロックチェーンの特性を活かし、ほぼ瞬時に取引が完了し、ガス代も1円未満という驚異的なパフォーマンスを実現。イーサリアムベースのDEXとは全く異なる快適な取引体験が可能です。
- 究極のユーザーフレンドリー: ウォレットを接続すると資産残高が自動で表示されたり、公正価格インジケーターが最適なレートを提示してくれたりと、初心者が迷わないための工夫が随所に施されています。複雑さを排したシンプルなデザインは、まさに「人間中心設計」のDEXです。
- 集中流動性(Whirlpools): Orca版の集中流動性機能も提供しており、Solanaの低ガス代と組み合わせることで、少額からでも効率的なLP戦略を試すことができます。
こんな人におすすめ:
- ストレスフリーな取引速度と安い手数料を最優先する人
- 複雑な操作が苦手なDEX初心者
- 急成長するSolanaエコシステムの波に乗りたい人
第6章:DEXのはじめ方・使い方(初心者向けガイド)
理論を学んだら、いよいよ実践です。ここでは最も一般的なウォレットであるMetaMaskを使って、DEXを利用する基本的な流れを解説します。
STEP 1:仮想通貨ウォレット「MetaMask」を準備する
DEXを利用するための最初のステップは、あなた自身の金庫となるウォレットを持つことです。
- PCのChromeブラウザに、公式サイトからMetaMaskの拡張機能を追加します。
- 指示に従って新しいウォレットを作成します。
- 【最重要】 表示される**12個の「シードフレーズ(リカバリーフレーズ)」**を、必ず紙に書き写し、誰にも見られない安全な場所に保管してください。これを失うと、PCが壊れた際などに資産を復元できなくなります。絶対にデジタルデータ(スクリーンショット、メモ帳など)で保存してはいけません。
STEP 2:ウォレットに仮想通貨を入金する
次に、DEXで取引するための元手となる仮想通貨と、ガス代として使用するネイティブトークン(ETH, BNB, SOLなど)をウォレットに入金します。
- CoincheckやbitFlyerなどの国内CEXで、イーサリアム(ETH)などの仮想通貨を購入します。
- CEXの送金機能を使って、STEP1で作成したMetaMaskのウォレットアドレス宛にETHを送金します。アドレスはコピー&ペーストで正確に入力しましょう。
STEP 3:DEXにウォレットを接続する
準備が整ったら、利用したいDEX(例:Uniswap)の公式サイトにアクセスします。
- サイトの右上などにある「Connect Wallet」や「Launch App」といったボタンをクリックします。
- ウォレットの選択肢が表示されるので、「MetaMask」を選びます。
- MetaMaskが起動し、接続の許可を求められるので、内容を確認して「接続」をクリックします。
これで、DEXとあなたのウォレットが連携されました。DEXの画面に、あなたのウォレット残高が表示されるはずです。
STEP 4:トークンをスワップ(交換)する
いよいよトークンを交換してみましょう。ここでは例として、ETHをDAIにスワップします。
- DEXの「スワップ」画面を開きます。
- 「From(支払うトークン)」にETHを、「To(受け取るトークン)」にDAIを選択します。
- 交換したいETHの数量を入力すると、受け取れるDAIの数量が自動的に表示されます。この時、手数料や予想されるスリッページも確認できます。
- 内容に問題がなければ「Swap」ボタンをクリックします。
- MetaMaskが起動し、取引内容の最終確認(ガス代の見積もりなど)を求められます。「確認」をクリックすると、取引がブロックチェーンに送信されます。
- しばらく待って、取引が承認されると、あなたのウォレットのDAI残高が増え、ETH残高が減っているはずです。取引完了です!
STEP 5(応用編):流動性を提供してみる
DEXの取引に慣れたら、LP(流動性プロバイダー)にも挑戦してみましょう。
- DEXの「プール」や「流動性」といったメニューに移動します。
- 「新しいポジションを作成」や「流動性を追加」を選択します。
- 流動性を提供したいトークンペア(例:ETH/DAI)を選択します。
- (Uniswap V3などの場合)流動性を提供する価格範囲を指定します。
- 提供する各トークンの数量を入力し、指示に従って承認プロセスを進めます。
- 最終確認を終えると、あなたのウォレットにLPトークンが送られ、流動性の提供が完了します。これ以降、あなたはそのプールの取引手数料の一部を受け取れるようになります。
まとめ:DEXはDeFiの未来を切り拓く鍵
DEXは、従来の金融システムが抱えていた中央集権的なリスクを取り払い、誰にでもオープンで透明な金融取引の機会を提供する、まさに革命的なテクノロジーです。
資産の完全な自己管理、パーミッションレスなアクセス、透明性、そして新たな収益機会。これらのメリットは、私たちの資産との関わり方を根本から変える力を持っています。
しかし、その自由には**「自己責任」**という大きな義務が伴います。秘密鍵の管理、ガス代、インパーマネントロス、スキャムのリスクなど、乗り越えるべきハードルも少なくありません。
本記事で紹介した5つのDEXは、それぞれが異なる哲学と技術的アプローチで、これらの課題に取り組んでいます。
- Uniswapは、集中流動性で資本効率の未来を示し、
- Curveは、低スリッページという専門性でプロの要求に応え、
- PancakeSwapは、低コストと楽しさで初心者の裾野を広げ、
- Trader JoeとOrcaは、新興チェーンの性能を最大限に引き出し、次世代のUXを追求しています。
DEXの世界は、日進月歩で進化を続けています。まずは少額から、ガス代の安いチェーンのDEXでスワップを試してみることから始めてみてください。そして、その仕組みとリスクを十分に理解した上で、流動性提供などのより深い機能に挑戦していくのが良いでしょう。
DEXを使いこなすことは、DeFiという広大な海を航海するための羅針盤を手に入れることに他なりません。さあ、自己責任の覚悟を持って、未来の金融への一歩を踏み出しましょう!
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DeFi学習20ステップ目次
DeFi(分散型金融)の基本から応用までを20ステップで完全解説!ウォレット作成、DEXでの取引、レンディング、イールドファーミング、リスク管理まで、初心者でも着実に知識を習得し、未来の金融テクノロジーを実践的に学べるロードマップです。
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