概要
トラベルルール(暗号資産の送金規制ルール)は送金を規制するルールです。
マネーロンダリングやテロ資金供与対策を目的で作られ、「Sygna Bridge」と「Travel Rule Universal Solution Technology(TRUST)」という2つのプラットフォームが立ち上がりました。
2つのプラットフォームのどちらかには取引所が所属することになりますが、取引所が所属していない団体への送受金ができないという複雑な環境が構築されました。
このブログではどこからどこへ送金が規制されているのか、どのように対応すればいいのか紹介していきます。
目次
トラベル(送金)ルールとは
トラベルルールはFATF(金融活動作業部会)が、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知する義務が生じる」というルールです。
このトラベルルールは、マネーローンダリングやテロ資金供与対策についての国際基準(FATF基準)で、各国の規制当局に対して導入を求めているもので、テロリストやその他の犯罪者が自由に電子的な資金移転システムを利用することを防ぎ、不正利用があった場合にその追跡を可能にする目的で作成されました。
世界で導入がトラベルルールの始まったのは2022年4月ですが、日本では2023年5月23日に閣議決定され、犯罪収益移転防止を目的に6月1日に施行されました。
トラベルルールのFATF準拠2つのプラットフォーム
取引所間のトラベル(送金)ルール
トラベルルールではSygna(Sygna Bridge)とTRUST(Travel Rule Universal Solution Technology)の2種類のプラットフォームがあります。各取引所でどちらかのトラベルルール対応プラットフォームを採用しています。
Sygna Bridge
台湾を拠点に置くBoolBitXと英国に拠点を置くEllipticが提携しSBIクリプトが資金調達することでSygnaBridgeの提供が開始された。日本の取引所が多いのはこちらです。登録の主な取引所は以下の通りです。
- SBI VC トレード
- DMM Bitcoin
- GMOコイン
- ビットバンク
- 楽天ウォレット
- LINE BITMAX
- ビットポイント
- ビットトレード
- BTCBOX
- OKCoinJapan
- CoinTrade
- TokyoHash
- AscendEX
- CoinEstate
- WhileFin
- CoinBest
- CoinBook
- Zaif
- MEXC
トラベルルールプロトコルは、数十の認可された暗号資産取引所に採用されています。データと技術は、60カ国以上の金融規制当局や機関から信頼を得ています。
Travel Rule Universal Solution Technology(TRUST)
米国を拠点とする仮想資産サービスプロバイダーのグループでUSトラベルルールを実装および遵守するためにTRUSTを設立。登録された主な取引所は以下の通りです。
- CoinCheck(コインチェック)
- Bitrue
- bitFlyer
- クリプトガレージ
- BinanceJapan
- Binance.US
- Coinbase
- Kraken
- Paypal
- crypto.com
- currency.com
- Fidelity Digital Assets
- Gemini
トラベルルールによる2つのプラットフォームの影響
取引所間の送受金ができない
異なるプラットフォームを採用する取引所間では送金ができないです。
2つのプラットフォームは相互関係にないためプラットフォームに属していない取引所同士が送金し合うことはできなくなります。
例えば、 CoinCheck(コインチェック) ではTRUSTが採用されているが、SBI VCトレードではSygnaが採用されているため、異なるソリューションを採用していることから、 CoinCheck(コインチェック) とSBI VCトレード間では暗号資産の送金ができない。一方で、同じTRUSTを採用しているbitFlyerでは CoinCheck(コインチェック) 間で送金が可能だ。
異なるプラットフォームを採用する取引所への送金方法
プライベートウォレットへの送金はできるので送金したい場合はプライベートウォレットを通す必要があります。問題は手数料がプライベートウォレットに送金する分余計にかかります。
トラベルルール例外の少額送金
少額の場合は送金できます。実際にSBI VCトレードから Bitrueまでの送金は可能です。数百万円の送金になるとおそらく止められる可能性はあるので十分注意の上、ご送金ください。
取引所・販売所のトラベルルールによる影響
顧客が暗号資産を送金する時に出金目的や金額を入力させるようシステムに組み込む必要があります。以下の条件を一つでも一致すると通知を行うようにシステム開発することになります。すでに運用中なので国内取引所ではほとんでできてます。
- 受取人と送付依頼人が同一。
- 国内の仮想通貨交換業者が、受け取り側の仮想通貨交換業者である。
- 送付する仮想通貨がビットコイン(BTC)かイーサリアム(ETH)。
- 送付する仮想通貨の邦貨換算額が10万円を超える額
- 違うプラットフォームへの送金は不可
暗号資産の購入者側のトラベルルールによる影響
トラベルルールはより厳格になりましたが、国内取引所を使っているユーザーは送金できなくなる取引所が出てきて不便に思うでしょう。取引所から送金する時に送金フォーム画面の手続きが複雑になったなーとも思います。
ただ、最も注意が必要なのがメタマスクやbifrost walletといったプライベートウォレットを使っている人は今回の法律等の改正により取引所において情報収集義務(プライベートウォレットや海外の無登録業者等の属性について調査・分析しマネロン等のリスクを評価)などが課されることとなり、時間がかかる場合があります。
トラベルルール まとめ
今回の対応は取引所同士のやり取りでマネーロンダリングやその他の犯罪を防ぐことができてもウォレットを使った犯罪を防ぐことができせん。今後さらに規制強化が必要になってきます。
さらに使いづらくはなると思いますが将来は使いやすいように変わっていくことを望みます。